☆.。.:*・ 星還祭 .:*・°☆



「ココウ君は星還祭の準備、してるんですか?」
店主が学校の宿題に飽きてつまらなそうにしている僕に話しかける。
「あれ?お客さんは?」
「帰りましたよ」

「…星還祭って綺麗だよね、空に沢山星を飛ばしてさ」
「そうですね、レンズ売りのお店も繁盛しているみたいですね」
「レンズに結晶を置いて星下草の朝露を入れる、
そして月の光にあてて星の結晶を作るんだよね」
そしてその結晶を星還祭の日に持ち合い
光を灯して空へ飛ばすんだ。
燃え尽きた結晶はそのまま消える。

それは地上から産まれる星が空へ還るようで、とても綺麗なんだ。
星への感謝の気持ち、光を空へ還す日

まだ小さな子供の頃、兄と行ったのを覚えてる。
「ココウ君の結晶は順調なんですか?」
「僕は…作ってないよ
 だってレンズも売り切れてるし」
 行かないから…僕は言葉を飲み込む

「今はとても綺麗なレンズが人気らしいですが
 昔はレンズはスタアレンズと決まっていたんですよ」
「え」

「ここ何年か、星還祭の時はこの町から離れる事が多かったのですが、
今年はいる事ができそうなので
 私も作ってみようかと思うんですよね
 少し遅いですが、ココウ君も一緒にやりませんか?」
私はもうやり方を忘れてしまって…
 店主はそう言いながらお店の奥から木箱を持ち出して
 僕にその中の一つをくれた。
「あ、スタアレンズ」
「はい、ココウ君の年頃では少しシンプルすぎるでしょうか?
でも今の使い捨てのレンズと違って、これは大切に扱うと、
ずっと長く使えるものなんですよ。
これでよければ一緒に」

店主はいつもとても優しい
僕は次の日、朝早く起きて星下草の咲く丘に行き
学校で使っていた試験管に朝露を集めた
その夜、月が綺麗に見える雑貨店で
レンズに結晶を入れ、ポタポタとたらす
月の光とまざった朝露をたらされた結晶はまるで
眠りからさめたようにゆっくりと溶けた。
これから少しずつ月の光と朝露に育てられ星の結晶に育ってゆく。

僕は結晶の育て方やコツを得意気に話した。
たぶん店主は何もかも知っているんだけど
楽しそうに話を聞いてくれた。

結晶も程よく大きくなった星還祭の頃、
店主はどうしても断れない用事があるということで
僕に星の結晶を託しどこかへ行ってしまった。
店主の結晶は僕のより大きくとても柔らかな色をしていた
一緒に参加は出来なかったけど
僕は何年かぶり星還祭で星を飛ばすことができた

クラスメイトの友達も沢山来ていた。
ぞれぞれ綺麗なレンズに結晶を乗せている。
僕はあたさわりなく少しだけ話をすると
すぐに隠れるようにして人ごみから離れ、
空が大きく見えるところを選んでうずくまる。
レンズの上の結晶に、星灯の人から分けて
もらった灯りをつけると
それはほんのりと僕の手元を照らした。

町長の合図とともに星を飛ばす。
僕はわざと少し遅れて星を飛ばす。
星を空へ還す

店主の結晶と僕の結晶が
空高く上って、先に上った星々と合流する
そして静かに消えていく
僕はその姿をずっと眺めていた。

本物の星空に消えていく光は
ただただ綺麗で…
一人だったけど、全然寂しくなかったんだ。

残ったスタアレンズをポケットにしまう

たぶん来年も作るだろう
店主がくれたこのレンズを持って

離れても、遅れてもみんなの中に入っていくために





Item:15
name:スタアレンズ
星還祭に使用する結晶を作るレンズ